好きな女を守ると決めた男の物語「嘘つきは殿様のはじまり」
Amazon.co.jp: 嘘つきは殿様のはじまり 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス): 福井 あしび: 本
大嘘をつかざるを得なかった女とその女を守ると決めた男の物語
「男性は1日平均3回もウソをついている!一番多いウソは「もうやったよ」:英調査 - IRORIO(イロリオ)」によると、イギリス人男性は52%が一日平均3回、女性は57%が一日平均1回は嘘をついているようだ。理由は、男性が「うん、もうやったよ」・「ごめん、電波が入ってなかったんだ」など、女性が「元気よ」・「今そっちに向かっているわ」などと本当に些細なことだ。
人間、生きていれば嘘をつくこともある。スムーズに日常を動かすために嘘が必要な時もある。おそらく、皆さんにも、日常で定期的にそんな嘘をつく機会があるのではないだろうか?
だが、どうだろう。そんな日常的につく嘘ではなくて、一世一代の大嘘を皆さんはついたことがあるのだろうか? 私はない。「嘘つきは殿様のはじまり」は、そんな大嘘をつかざるを得なかった女とその女を守ると決めた男の物語である。
冒頭の紹介
主人公の小太郎とおしんは幼馴染で夫婦の約束を交わした間柄だ。しかし、おしんは貧しさから身を売られてしまう。
「私を助けてくれる?」とおしんから聞かれた小太郎は、「僕にはできないよ」と答えてしまう。小太郎は母親のことを考えてしまう。浪人の末に父親が倒れた。それからというもの、内職をしながら自分を育ててくれた母親をただ一人置いて逃げてしまってもよいのかと。
しかし、そんな小太郎に母親は厳しく言う。「こちらを向きなさい小太郎。これは亡き父上の脇差です。選びなさい・・・・・・ 刀か・・・鳥かごか。刀が嫌なら無理強いはしません。親子二人で鳥かごを編み、つつましく暮らすのもよいでしょう。ただ、武士の子としてその刀を選ぶなら・・・ 幼少より共に育ち、末は夫婦と誓った女子を・・・ 見捨ててはいけません」
「あなたが今までどんな人間だったかよりもね・・・ これからどう生きていくかのほうが大事なの。私のことは心配しないで、あなたが行きたい道を進みなさい。選ぶのです小太郎」と、母親は選択肢を残しながらも、小太郎に武士としての生き方を教え導く。
「僕は・・・ おしんを護れる武士になりたい」と小太郎は武士としての覚悟を決めて、おしんをつれて逃げようとするが・・・・・・。
しかし、敵が目の前に立ちはだかり、小太郎は切られてしまう。小太郎とおしんはどうなるのか?
城中で小太郎は気が付く。小太郎は生きており、おしんは殿様になっていた。おしんは、河内8万石高城家を継ぐことになったのだ。跡取りがいないため、男として生きていくことなる。そう、嘘をつかざるを得ない状況に巻き込まれたのである。果たして、小太郎はおしんを守り抜くことができるのであろうか?
評価・批評
このような漫画は私は好きである。あつくなる。
この漫画は、「男の成長物語」であり、かつ「幼馴染ものの恋愛物語」である。抗うことができない運命に弄ばれる小太郎とおしん。2人の子供には、自分たちの力でこの状況から逃げ出すことはできない。それ故に、現状に対応しようと小太郎は頑張る。小太郎は、おしんを守ると誓い、命がけで成長する。そして、おしんに危害が加えられようとするときには死を賭してそれを守ろうとする。それは、すべてかつての誓いのためにである。
環境を変えようとする努力は大切である。しかし、時には、環境に合わせて自分が変わらなくてはならない。いや、おそらく後者の方が格段に多い。
そんな思いに駆られている人にはこの漫画はおすすめできる。将来を誓った幼馴染のために命がけで変化していく男のいじと覚悟がこの漫画からは溢れ出している。